ジュラシック・ワールド/ドミニオン

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者

©YouTube.com 2022

★3.8

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者 Jurassic World Dominion

監督   コリン・トレヴォロウ
脚本   エミリー・カーマイケル、コリン・トレヴォロウ
製作   フランク・マーシャル、パトリック・クローリー
原作   マイケル・クライトン
キャスト クリス・プラットブライス・ダラス・ハワードサム・ニール、ロー            ラ・ダーン、ジェフ・ゴールドブラム

 ひとつのスパイアクションムービーとして観るか、ジュラシックパーク好きのファンムービーとして観るかすれば、邦題を除いてかなりの出来栄えだと思う。しかし、大作シリーズの完結作として観ると、あまりに物足りない作品となった。

責任

この世界に、責任というものは存在しないのだろうか。恐竜を街に放ってしまったことや、直接関係はしないがハイブリッド恐竜を生み出し多くの犠牲を出したことへの倫理観は全く問われず、その張本人が田舎で悠々自適に暮らしているのはないだろう。逮捕されるまでいかなくとも、もっと苦悩してほしかった。たとえば主人公たちが、政府による恐竜のいる街を爆撃する計画を止めようとするが、「本来責任を負うべきはお前らだ」と言われ何も言い返せない……みたいなのが観たかった。結局のところ、倫理観の演出のためにも、娯楽的にも恐竜ドタバタがあるべきだった。誰かがティラノサウルスの捕獲には3年掛かったと言っていたが、観客はその3年で何があったのかが観たいのだ。YouTubeにカットされたプロローグ映像が公開されていたが、なぜカットされたかが本当にわからない。クライマックスも、プロローグがあるから活きてくるのに。

脚本が粗い

様々な自称映画レビュアーにかなりボロクソに言われている本作だが、つまらない映画ではない。私は恐竜好きなので、恐竜が出てくるたびに興奮した。池につかるドレッド・ノータス、氷の中を走るピロラプトル、謎の多いテリジノサウルス。最後まで楽しい映画だった。しかし、どうしても気になってしまうのが、脚本の粗さである。まず、最初と最後で変化が見られない。2時間半もあるのに、「恐竜と人間の共存はできるのか」というテーマへの応答が全くと言っていいほど描かれていないのだ。テーマについて描いていないのもあるが、私は「人間の敵」を出してしまうことが良くないのではと思っている。本来人間が作った恐竜が人間を襲う皮肉を描いた映画なのに、人間の敵を出すことで恐竜が悪い人間を襲ってやったぁの域に留まってしまうからだ。ブルーが全く活躍しなかったり、レクシィ(=あのティラノサウルス)があまりにもあっさり出てきてしまったり、人が喰われるシーンに全く面白みがなかったりするところを見ると、やっぱり批判されるのも仕方ないのかなぁと思ってしまう。

イナゴ

 自称映画レビュアーとして、これはやっぱり語らなきゃいけないのかなぁ。では、語りますが……本作の主人公はイナゴです。正直、サム・ニール主演「ジ・イナゴ」と言われた方がしっくりくるくらい、イナゴが多かった。さっきの話と絡めると、最初と最後で変わったのがイナゴの被害だけだからなのも、イナゴのインパクトを押し上げている要因の一つなのかもしれない。ただ、なんでバイオシン社はイナゴを作っていたんだろう。友人は、イナゴを作って地球を壊滅させ、それを救うことで利益を得ようとしていたんじゃと考察していだが、だったらなぜイナゴを全部燃やしてしまったのかがわからない。そもそも、バイオシン社ってなんなんだよ。話は変わるが、あの黒人女性は誰なんだよ!わからないことが多い、まるで恐竜のような作品だった。

 最後に、これだけは言いたい。個人的に思う最大の良い点は、メイジ―(クローン少女、イザベラ・サーモン演)が前作よりさらに可愛いウルトラ美少女になってたこと。最大の欠点は、あの音楽がほとんど流れないこと。もしエンドロールで流れていれば、とりあえず完結はしただろう。

ノープ

ノープ

©YouTube.com 2022

★3.8

ノープ(NOPE)

2022年製作/131分/G/アメリ

監督 ジョーダン・ピール(『ゲット・アウト』『アス』で知られるコメディアン)

脚本 ジョーダン・ピール

制作 ジョーダン・ピール、イアン・クーパー

キャスト ダニエル・カルーヤ、キキ・パーマー、ブランドン・ペレア

あらすじ

田舎町に住む男が、謎の落下物によって父を亡くす。男は妹らと共にその死の原因であると思われる謎の飛行物体の撮影に取り組み始めるが…。

※ネタバレ注意

 公開初日に観た。自分の両隣がカップルで、なんだか虚しくなった。ジャンプスケアてんこ盛りで、何回か飛び上がって恥ずかしかった。風邪をひいたときに見る夢を壮大にした映画といえば伝わるだろうか。わかりやすく言うと、気持ち悪くて内容のない、でもどこか魅力を感じる部分がある映画であった。
 前半は眠くなるが、途中に入り込む謎の人殺しチンパンジーが印象的。殺人のグロテスクさもそうだが、「限界を超えた」という表現が不気味で怖かった。ジージャンからチンパンジーが出てくると予想していたが、結局チンパンジーの立ち位置はよくわからなかった。某映画レビューサイトで、目を合わせてはいけないことを暗示していると書かれていたが、あの子供は目を合わせなかったというよりただ隠れていただけではと思い腑に落ちない。兎にも角にも面白いことに変わりはないので良いのだが。
 前半で眠くなって寝てしまい、後半は本当に夢だったのかもしれない。奇妙な要素だけが詰め込まれ、結局どこに着地したのかわからない、パラシュートで異世界を舞っているかのような後半。ジョーダン・ピールエヴァ使徒をモチーフにしたという、「あれ」が変貌していくシーンは勿論のこと、巨大な人形を喰わせるシュール極まりないクライマックスは、マスクのなかで物理的に開いた口が塞がらなかった。見たいものを見せてくれる王道な演出がきちんと施されている(もちろん意味の分からなさは健在であるが)序盤とは相反し、時間が経過する毎にどんどん意味不明になっていく、見たいものより監督が見せたいものだけが永遠と出続けるだけの後半には、圧巻の二文字が相応しいだろう。
 取り敢えず観るなら今のうち、つまり映画館に行かないと面白くない映画である。個人的に、オムニバス構成であることや意味がわからな過ぎるところになんとなく呪怨と近いものを感じた。